言葉が喉につっかえて出てこない。


今土方は大坂へ行けと言ったのか?


ーーーーーーー何故?




「覚えているか?藤堂が出て行った時、俺がお前に言ったこと」


それは少し遡り、藤堂が御陵衛士として新選組を離脱した時の頃だ。

土方はいつになく真剣な顔をして重い口を開いた。


そしてこう言った。


















「お前を江戸で嫁がせようと思ってる」

「………」

「俺の義兄が江戸で良い嫁ぎ先を探してくれてな、漸く見つかったと手紙が来た。
お前の好きな甘味処の息子だそうで、優しく良い男だそうだ。それで江戸へお前を連れて行ってやりたいところだが、今は人手がねえからよ暫くは近藤さんと共に大坂で……」

「待ってくださいっ」



どんどん勝手に話が進み、このままでは不味いと漸く言葉が出た。


なんだなんだなんだ!?

土方は何を言ってるのか分からない。


「嫁ぎ先?江戸?え?なん、なんですかそれ?」



状況が全く掴めず混乱する頭で必死に整理してみる。


確かに土方は言っていた。


新選組がこれから戦に巻き込まれるようなことがあれば、女である矢央の危険が増す。

男であり武士として戦場で死ねるなら本望という土方達ならまだしも、若くて女である矢央を土方はどうしても戦に巻き込みたくなかった。


だから考えてほしい、と。

でもそれは江戸に行き、土方の義兄の家で世話になれというものだったはずだ。


「嫁ぐ…なんて、私っ聞いてないっ!?」

「嫁ぎ先を探してくれたのは兄貴だ。俺達は、お前の傍にずっといてやれるわけじゃねえし、お前は知らねえ奴のところでずっと世話になり続けるのは嫌だろう?
良い話があるんだったら、今のうちに嫁いで子でも産んで女の幸せを掴め」

「それは確かに、他人の私がずっとお世話になるのは気が引けますけど…でも嫁ぐって…」


もともと誰かとこの時代で結婚する気などない。

それでも、もしその可能性があるなら自分が好いた相手とだったら……と思って頭を振った。