「…情けないですね男のくせに」
自嘲する沖田に「そんなことないです」と、宥めるように背中を撫でた。
「子供の頃は近藤さんや土方さんのまえで泣くこともあったけど、大人になってからは矢央さんの前でばかり泣いているような気がします」
「いいじゃないですか。男性だって泣きたい時くらいありますよ」
沖田の場合は周りに心配かけないように常に笑顔でいるため、こうして泣いて弱音を吐いてくれた方が良いとさえ思う。
膝立ちのまま沖田が落ち着くまでずっと背を撫で続けた。
その沖田も矢央の腰に腕を回したまま、甘えるように肩口に顔を埋めている。
「可笑しいですよね…」
呟くように沖田は言う。
「矢央さんのほうが年下だというのに、こうして甘えてしまう」
不思議と落ち着くんです、と言う沖田に矢央はクスリと笑った。
「私がこうできるのは総司さんくらいですよ?」
「そうなんですか?」
顔を上げると二人の距離は自ずと近づき、思ったよりも近いその距離に互いに頬を染めた。
「あはは、はい…。だって、考えてみてくださいよ?土方さんや永倉さんや山崎さんとかに、よしよしってした日には何をされることか…」
「…まあ、想像できるような、できないような。でも私だって」
言葉を区切り、ふと考え込む沖田に疑問符を浮かべて見詰めていると、何を思ったか腰に回っていた腕がグイッと身体を引っ張った。
「うやっ!?」
その反動で矢央は布団の上…正しくは布団に寝転んだ沖田の上に覆い被さるようにして倒れる。
「あ、あああああのっ?」
「私だけなんでしょう?」
「へ?」
「私だけ矢央さんに甘えられるなら、とことん甘えてみようかと思って」
真下にある沖田の顔を見下ろせば、ふわりと柔らかく微笑む沖田がいた。
白い布団に艶やかな黒髪が広がり、少しはだけた寝間着から覗く白い胸元がやけに色っぽい。
……な、なんか私が襲ってるみたいだよっ!?
「矢央さんって良い香りがする…」
「ふひゃっ」
スンスンと首筋の匂いを嗅ぐ沖田に、あんたは犬かと言いたい。
そして少しいつもと口調も違うのが気になって仕方ない。