「…そうですか」


永倉はとうとう矢央にその想いを告げたのかと知り、少し複雑な心境の沖田。


冷たい風にサラッと髪が靡き眼にかかり僅かに細めた。



「矢央さんは、永倉さんを好きですか?」


聞かなくても何となく気づいている。

矢央が永倉に対する想いに信頼とは違う想いが生まれていることくらい、傍で見てきたのたから。


「多分…好きなんだと思います」


沖田の想いを知ってはいるが、隠すのは失礼な気がして正直に言った。

チラリと沖田を見上げると、穏やかに微笑んでいる。



「ならばその想い大切にしてください。私は、矢央さんが幸せならばそれでいいのです」

「総司さん…私…」

「私が以前貴女に告げた想いは今も変わらない。それでも、それを押し付けようとは思ってないですから」



私が願うのは、ただ貴女の幸せ。

好きな者と結ばれ、女子としての幸せを手に入れられるならそれで良い。



「…コホッ」


空咳をした沖田を見て、矢央は眉根を寄せた。

立ち上がり沖田の背中を軽くさすってやると、潤んだ瞳で矢央を見詰め礼を述べる。



「ありがとう。…寒くなってきましたね」

「本格的な冬が来るんですね。総司さん、身体に障るから部屋に戻りましょう?」

「コホッ…そうですね」





十一月。大分冬の色を濃くし、厚い雲が空を覆っていた。


それぞれの心にも雲がかかったかのように皆浮かない顔をして時を過ごした。


そしてあっという間に十二月を迎え、新選組はまた激動の渦に呑み込まれて行くのである。