矢央の中に芽生えた確かな気持ちを伝えていいものなのか。
  

お互いに昨日大切な仲間を失ったばかりで、表向きは何も無いと振る舞う新選組も、裏ではその対処に慌ただしく動いている者達も少なくない。


それぞれに傷を負っている今の状況や、熊木に言われことが引っかかり素直になれない。




「…近いうち、左之も連れて平助の墓参りに行くか」


言い躊躇っている内に永倉によって話題は変えられてしまい、何も言えなくなってしまう。


「…はい」

「お前が行けば、あいつは喜ぶ」

「それは永倉さん達でもですよ」



二人にとって本当に大切な存在だった藤堂。

その藤堂を失ってしまい、二人の間には恋焦がれるのとは、また違った想いも生まれている。



藤堂に想いを寄せられていた矢央、友が想いを寄せていた女子。

永倉から大切な仲間を奪ってしまったと感じている矢央。


互いに藤堂平助という亡き仲間への想いが、二人の間に僅かな躊躇いを生んでいた。