受けてばかりでは勝てない。
「そんなこと分かってる」、と舌打ちしたところで、矢央はチラリと刀に目を向けた。
どうやっても刀では勝ち目がないんだ、だったらこんなもの自分には必要ないだろうとポイッと刀を捨ててしまった。
「なっ…」
誰の声なのか、刀を捨てたことに驚いているのだろうが構ってる暇もないので無視を決め込む。
…だって私には役にたたないもん!
一応、土方が矢央に合わせてこしらえてくれた刀といえど普段扱うことがない矢央にとっては、刀の重さが負担になる。
「…諦め、ですか?」
剣先を矢央に向け、鋭い瞳が見据えていた。
ゾクリと背筋が震えるのを感じながら、小さく首を左右に振る。
「…私に刀は重荷にしかならないみたいです。だから…」
素手で行かせてもらいますよ。と、構えると熊木の懐へと素早く潜り込んだ。
それでは、そのまま斬られてしまうと、沖田が息を呑んだ時。
「ぅわっ…っっ」
熊木が動くよりも少し早く、熊木の右腕を抱え込むとそのまま背負い投げ。
見事クルンと回転して地に背中を打ち付けた熊木からは、初めて痛みに呻く声が漏れた。
そして掴んだままの腕を捻り、動きを防ぐつもりで肩を足で押さえつけた。
「私はこっちの方が向いてるんです。 一対一なら刀がない方がいい」
「よっしゃっ!!矢央よくやった!そのままぶった斬れ!!」
原田が右の拳を上げて騒げば、矢央はそれは無理だと投げ出した刀に目をやる。
自身は熊木を押さえつけてるし、刀は届かない場所にある。
さてここからをどうするべきか。
「…余所見している余裕を与えた覚えはないですよ?」



