熊木の険を受けては流し、また受けて流す。

体力的にも男と比べると劣る矢央は、次第に熊木に押されるようになり


ーーーカキッッッン!!


熊木の刀を受け、身長差から上から押さえ込まれる形になると矢央の顔は苦痛に歪んだ。

物凄く重い。

永倉も一撃一撃重かったが、やはり手加減していたんだなと改めて思っている場合ではないだろう。



「……くっ…」

「あの時と同じだ。 受けるばかりでは勝てないですよ?」

「っっそんなこと分かってるよっ!!」


下半身に力を入れ、グッと熊木を押し返す。

たったそれだけのことなのに、熊木は平然としていて矢央は息を上げていた。







「土方さん、助けないんですか? このままでは、矢央さんは…」

「勝てねぇだろうな」

「分かっていて、見ているだけですか…」


熊木と矢央の戦いを見ていて、沖田だけではなくあまり刀を使わない原田でさえも、矢央が熊木に勝てないことは明らかに分かっていた。


矢央は熊木を倒すための決定打が出せない程に体力を消耗していて、よく見れば尋常じゃない汗をかいている。

此処へ来るまでに体力を消耗したか、怪我を負ったのか矢央には最初から戦う体力など残っていなかったのだろうと。


「…総司、いいから黙ってろ」

「………」


腕を組んだまま、押され続ける矢央を難しい顔をして見詰める土方に沖田は解せない。

仲間の助太刀をすることの何がいけないのか。


「総司」


矢央の身体が斜めに傾くと、居ても立ってもいられず駆け寄ろうとした沖田に制止の声がかかる。


「でもっ」

「黙って見てろ」

「…っっ」


悔しいと思った。
土方も永倉も山崎も、どうして皆黙っていられるのかと。

大切な人が目の前で危険な状態だというのに、助けられるというのに黙って見ているだけ?


「矢央さん…」


ーーー私はそんなに出来た大人じゃないよ。