ーーーいつものように。
その言葉は、今の矢央には重い枷となる。
“守る”と決めてから、いつだって自分が守られてきたのだ。
何一つ借りを返せていないまま、こうしてまた迷惑をかけている自分が腹立たしく、沖田などは迷惑に思っていないと言うが、矢央にとって周りがどう思うかではなかった。
「間島、お前は戦える状態やな…」
「勝てばいいんですよね?」
山崎の言葉を遮って、溜め息を吐き出し言う。
「ええ、勝てば手を引きますよ」
ならば迷うことはない。
戦えばいい。
いつかこの日が来ることも、そのために辛い稽古にも耐えてきたんだ。
矢央はグッと拳を握り、右足を下げると構える。
「なら…私に選択肢は一つしかない」
「ふっ…では、あの日の決着をつけましょうか」
「間島っ!?」
声を上げた山崎を振り返るが、矢央は安心させようと微笑む。
「大丈夫です。 簡単には負けませんよ…。 なんせ毎日しごかれてましたからね」
そう言ってチラリと永倉を見れば、眉間に皺を寄せていて、あれは相当怒っているなと直ぐに視線を逸らした。
「…いつでもどうぞ」
ニコッと微笑む熊木には相変わらず隙一つなく、一歩でも動けば斬り込まれそうで、ゴクリと唾を呑む。
どう考えても矢央が不利だ。
熊木は独学ながらも幼い頃から険を学び、それと違い矢央はつい最近始めた初心者。
大人と子供の差がある。
刀だけでは到底勝てないと判断した時、痺れを切らしたのか先に仕掛けてきたのは相手からだった。



