熊木の中では今此処で新選組を潰すつもりは最初からなかった。

これから時代は新しい流れがやってくるはずで、そこに新選組が必要かと言えば否である。

何となく見えた未来では、幕府はなく幕府側についていた者達も消えていく…そう夢で見た。

ならば今此処で無理をして新選組を潰す必要は何処にもなく、かと言って矢央がいる以上無視も出来ないので遠まわしかと思いつつ、まどろっこしい作戦を立てたのだ。



「ではそろそろ、蹴りをつけますか…」


熊木は、ゆっくりな動作で刀に手を添えた。

その姿を見て全員に緊張が走ったが、熊木は矢央ただ一人を見据えていた。



「しつこいようですが。間島さん、貴女は彼等を守るのでしたね? ならばこうしましょうか」


うっすらと笑みを浮かべ、



「貴女が俺に勝てたら、もう新選組には手は出さない。 さあ、どうします?」

「…っ」


熊木と勝負する。

矢央は以前まだ熊木が新選組にいた頃に、原田の提案で急遽始まった試合を思い返す。

あの時、土方に止められていなければ取り返しのつかない大怪我をしていたかもしれない事態になり、原田や藤堂はこっぴどく叱られた。


その試合は熊木の勝利と言っていいだろう。


ーーー勝てる気がしない。


「どうしました? 俺から守りたいのなら、俺に勝しかないでしょう? それとも、いつものように助けを乞いますか?」

「……ッッ!!」