母が心配していた出来事が起こった。


少年は断片的な未来しか見えず苛々が積もっていたのか、少女に無理矢理未来を見させ怯える少女に構うことなく言ったのだ。



「これは俺達のためだ! お前は、俺よりも未来が正確に見えるのだから俺に力を貸すんだ!」

「嫌っ…怖いよ」

「怖くなんてないよ。 この力を使えば、誰も俺達に怖い思いをさせられなくなるんだ。 そうしたら、父上も母上も幸せになれるんだよ」


少女にとって少年はとても優しい兄だったのに、いつからか狂気に満ちた眼差しが怖く思うようになった。


突然怒ったかと思えば、わざとらしく笑ってみせる兄が怖い。


それからも少年の少女への強要は続き、父と母は次第に元気を無くしていく少女を気に病み、ある決断をした。

それは兄妹を離すこと。

妹への執着が凄い兄も、妹がいなくなれば少しは前のような純粋で真面目な少年に戻ってくれるのではないか。

そして、妹も恐怖の存在となった兄と離れれば明るく笑顔の絶えなかった少女に戻れるのではないかと。