彼女が生まれたのは、少年が六つの時だ。

町外れにある古びた一軒の長屋に親子三人での暮らしが、この日から四人になった。


“妹”という存在に、感情に乏しかった少年も嬉しさに頬を緩めた。

小さくて色白で瞳の大きな赤子を見て、少年ながら将来は美しく育つのだろうと思い、今から悪い虫がつかないように鍛えておかねばと思う程に妹を可愛がった。



「すまないねえ。 家が貧しいばかりに、貴方に苦労かけて…」


少年の父母は駆け落ちして今の長屋に身を置き、その日暮らしの生活をしていて、幼い少年も家計を助けるために毎日父と共に働きに出る。


時々見える寺子屋で同じ年頃の子供達が学を学ぶ姿や、剣術道場で竹刀を振る音を聞いては羨ましく思うが、少年の家からはどんなに頑張っても到底通えない。

だから思った。
家族で苦労のない暮らしがしたいと、純粋に少年は思っていた。