新選組の幹部に加え平隊士達も含め戦っても、熊木が集めた輩の方が僅かに多く、一人で数人を相手にしているため流石に手こずっていた。


そんな時「うっ…」と、喉を詰まらせたのは沖田だった。

口許を押さえうずくまった沖田に男が刀を振り下ろすが、それに素早く反応し下から刀を男の腹に突き刺した。


「がはっ…はっはっ」


額に脂汗を浮かべ苦しそうな息遣い。

矢央の傍で矢央を守りながら戦っていた山崎は、こんな時に発作がおきたことに舌打ちした。


「沖田さんっ、貴方は下がっていてくださいっ」


今の所吐血はしていないようだ。
ならば安静にしていれば発作は治まるだろうと判断したのだが、やはり相手はあの沖田である、そう易々受け入れてはくれない。


傍に駆け寄ってきた山崎を睨み、沖田は「嫌です」と、きっぱり言って退ける。


「言ったはずだ、私は近藤さんのために戦うのだと…」

「ですがもし…」


吐血をしたらと、言い掛ける山崎に沖田は刀の先を突きつけた。

それ以上言うなと言うことだろう。


そして、また襲い掛かってくる男達を倒していく沖田の細い身体を見て悔しげ気に見詰めるしかなかった。



「副長、俺は沖田さんの傍で戦いますので、副長は間島を宜しくお願いします」


一度沖田の傍を離れた山崎は、土方にそう告げると直ぐさま沖田の下へと戻り、沖田を庇うようにして戦う山崎を見て土方もまた悔しげに眉を寄せていた。



「矢央、いい加減泣いてる場合じゃねぇぞ!」


皆戦う中たった一人戦意喪失した矢央は現実を受け入れられずに ただ泣いているばかり。

泣いている場合じゃないことくらい分かっていても、とめどなく溢れる涙を止める術がない。


藤堂に続き坂本まで失い、そしてまた誰かを失うかもしれない不安が途切れることなく襲ってくるのだ。


「失うのが怖いですか?」

「…っっ!?」

「だから貴女は彼等を守るのだと俺に言った。 あの強気は何処へ消えたのか」

「…うっせぇよ。 こいつに守られる程、俺達ぁ、落ちぶれちゃいねぇぞ」


今の矢央には、自分自身守ることすらきっと出来やしない。

土方は俯く矢央の頭をガシッと鷲掴むと強引に顔を上げさせる。


涙でぐちゃぐちゃになった顔を覗き込み、鋭く睨み付けた。