「ほぉ〜」


面倒には変わりはないが、面倒なことの中でも多少面白い部類だと土方は思った。

文机に頬肘をつき、ニヤニヤと笑みを浮かべて睨んでいる矢央を見る。



「なんですか…」

「いや、まだガキだガキだと思っていたが…。 そうだよな〜、お前も年頃なんだよな」


この時代、矢央くらいの女子は普通に結婚していてもおかしくない。

だが矢央は同じ年頃の女子と比べ幼さが残るために、土方にはどうしても女というより子供にしか思えなかった。


そんな矢央が、


『手が触れただけでドキドキ…するなんて可笑しいですよね?』


なんて言いながら、頬を赤らめ眉間に軽く皺を寄せるので、見ている側としては面白かった。


「…ンで、それって永倉だからなのか?」

「ん?」


クスッと鼻を鳴らし、土方は更に問う。


「他の野郎に触れられても、そうならねぇのかって」

「ん〜……」


分からない。

どうなんだろうかと、布団にくるまったまま考え込む矢央。


その時、行灯の灯りで照らされ壁に写る影が動いた。


.