「好きな奴はいるかだと?」
コクコク。
向き合って座る二人を異様な空気が包む。
何か面倒事を持ち込まれたとは思ったが、まさか恋話をさせるため?
土方は、わざとらしく息を吐いた。
「いねぇ…」
「なんだ、寂しい人なんですね」
「てめぇは…ゴホンッ。 好いたはれたなんてこたぁ、俺にはどうだっていい。 ま、こんなもんなら良くもらうがな」
そういうと押し入れから箱を取り出し、蓋を開けると中から束になった文を床に広げた。
文には全て"土方様へ"と書かれているので、この手に余る文全て土方へ送られたもので間違いないらしい。
どれも字の特徴が違うので送った人物は多数いるとわかった。
「読めない…」
「勝手に中身をみるな。 つぅか、山南さんに教えてもらってんじゃねぇのかよ」
「うにゃうにゃ字なんてわからない」
達筆すぎたり、字が流れているせいで矢央には難しい。
結局読めずに箱の中に返し 「なにこれ?」 と尋ねた。
「恋文だ。 遊女に始まり町娘までと、モテる男は大変だ」
「なんだ自慢ですか。 沖田さんに自慢しても無関心で、近藤さんにしても笑われるだけで、自慢する相手いないからって私にしないでくださいよ〜」
「……うっせ」
図星なんだ……。
話は逸れたが、結局何をしに土方の部屋に来たかを一から説明し終えたあと、土方は珍しく目を見開いていた。
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