もしも、と思うことがある。

新選組を離れる時、あの時あのまま新選組に止まっていたらこんな結末を迎えることはなかったのかと。

目の前で泣きながら笑う愛しい人と、そして支えてくれる頼もしい友と、もっと長く共に生きられたのかと。



「…ただ、ずっとわらって…いたかったんだ」


ポロッと、一筋の涙が頬を伝った。


「み…んなと、た、だまいにち…あたりまえに…ごほっ…わら…て。 なのに…ぼくっ…が…みうしなってしま、たから…ごめん」

「平助っ…お前は何も悪くないっ」

「ああっ…これからいっぱい笑えばいい! ほら、この矢央の馬鹿面笑えるぜ!」

「はは…ごほっくっ…ちょっ…ぼくの、すきなこ…いじめない、でよね?」



思い出すのは、楽しかったことばかり。

矢央と永倉と原田と、よく馬鹿話をしては笑い合った。

甘味好きの沖田が珍しく一つだけ残して矢央にくれた団子を、大の大人三人で取り上げ怒らせたこともあった。


ーーあの時の矢央ちゃんは、総司並みに怖かったよね。


「や…おちゃん…このまえは、ごめん…。 きみにきらわれれば、もう…あとにはひけないと…おもって…でも、けっきょ、く、まいにちくいてばかり、だった…」

「ううんっ、もうっいいからっ…あはっ…こっちも、もういいってば!!」

「はは…やっぱ…すき、だな」


嫌われてしまえば、もう二度と会えず、そのうち心の中の矢央も忘れられる日が来ると思っていたのに、半年以上経っても想いは募るばかりで、


「ずっ、と、あいた…かったんだ…」 


力の入らない腕を必死に伸ばすと、涙に塗れた頬に触れ忘れないように、この手にその温もりを記憶させる。


藤堂の霞む瞳に映る矢央を決して忘れないように、もしあの世があるなら寂しくならないように矢央の笑顔を覚えておきたい。