「隊士達は大分いなくなったか?」


殿を努めている永倉は、暗闇に身を隠しこそっと辺りの様子を伺っている。

その背後には少し落ち着いたらしい矢央を守るようにして原田と藤堂もいた。



「ところで平助、お前はこれを知ってたのか?」


原田に尋ねられた藤堂を矢央はチラリと伺い見ると、藤堂が首を振ったのを見て安堵した。


「夕刻から様子は変だし、伊東さんがいなかったから何かあるんだと思って聞くまでは知らなかったよ」

「…つうことは、半分知ってて半分知らなかったわけだな」


此方を向いていない永倉の低い声に、安堵したのは束の間で矢央はキョロキョロと男達の様子を窺う。

きっと女が口を挟むことじゃないと怒られると思って何も言わずにいたが、それでもあのことは伝えるべきだと思い意を決して口を開いた。



「あ、あの…」

「それとお前だ、お前!」

「はい?」


せっかくの決意も虚しく永倉によって崩され、ぐるんと振り返った彼の冷ややかな笑みが恐ろしい。

怒っていらっしゃる。

土方といい永倉といい、この二人の怒り方は心臓に悪かった。


「なんで、お前が此処にいて、しかも戦ってんだよっ?」

「ごめんなさいっ! それには訳が…」


両手を合わせ、取り敢えず謝ってしまおう。

恐る恐る見上げると、未だに引きつった笑みのままの永倉に溜息が出そうだったが、そんなことをしてみろ、拳骨が飛んでくるかもしれない。


「はあん、訳ねえ? その訳次第によっちゃ後でみっちり仕置きが待ってるからな?」


頭を鷲掴みにされ、ぐりぐりと押さえつけられながらもコクンコクンと頷けば、漸く永倉は小さく息をつき話しを聞く体勢に入った。