矢央は震え上がった。

これが戦場なのだろうか?


油小路に近付くに連れ負傷した隊士達とすれ違い、無視するわけにもいかず応戦する。


初めて刀を抜き、習った通り刀を構え相手の刃を受け流し致命傷にならない程度の怪我を負わせた。


息が乱れる。
敵の数が多すぎやしないか?

御陵衛士より新選組の方が遥かに人数は勝はずなのに、どういう訳か敵の方に出会す確率の方が高いのだ。


やはり熊木が手を貸していると見て間違い。


矢央がそう確信した時、また敵が現れた。



「貴様も新選組か?」


首を傾げながら近付いてくる男は、矢央が味方か分からないらしい。

その理由は矢央が隊服を着ていないからだ。


これは上手く交わせるかもしれないと踏んだが、そう上手くもいかないらしく、男はふっと笑った。


「まあ、どちらでもいいか。 わしらは、ただ人を殺せばいいと言われたまでだ」


男は刀を振り上げ矢央に襲いかかる。



ーーーキーンッッ!!


白刃が重なる音がやけに響いた。

上から押さえつけられ、じりじりと白刃が迫る。



「貴方は御陵衛士じゃないのっ?」

「ああ違うっ! 食うに困っていたわしらのような奴を大勢雇っているようだぞ!」


がっ!と、力を振り絞り男を押し退ける。


小柄な矢央に押し退けられると思わなかった男は油断し、後方にふらふらと後退り、その隙を付き矢央は素早く走り込めば勢いよく男の腹に蹴りをいれてやった。


「くがっ!!」


腹を押さえうずくまる男の脇を通り、また走り出す。


「そう言うことねっ。 何人雇ったっていうのよっ!!」

早く永倉達と合流したいのに、次から次と敵が現れては応戦し、矢央の体力も底をつきかける。


右から白刃が飛んでくれば身体を退けぞり、頭上からこれば隣に避け白刃を逆さまに持って胴を狙う。

敵の命を奪わないように戦うには、矢央の腕では限界で刀を持つ手に力が入らなくなってきた。


刀を棄てて戦うかとも考えたが、相手は何かしら武器を持っているので身体一つでは、やはり勝てそうもない。


「このままじゃ、永倉さん達に会う前にやられちゃうよっ」