山崎のおかげで迷わなく油小路につきそうだと安心しかけた頃、油小路が近いのだと分かる。

やたら騒々しく、怪我をした隊士とすれ違う。


どうなってるんだろうか?


数人ずつの隊士と行き違うのを、矢央は立ち止まり考えた。


「あ、間島さんっ!? 何故君が此処に?ってそんなことより、隊長からの命で我々は屯所に戻ることになった!」


名前は分からないが隊服を着た隊士が矢央見て叫んだ。


「え? じゃあ、永倉さんは?」

「わ、分からないっ。 しかし、隊長は殿を努めると仰っていたから…」


隊士は来た方向を振り返る。


以前聞いたことがあった。殿とは、退却する時に仲間を逃がすため最後尾で敵を食い止めるためにあると。


つまり永倉はまだ危険な場所にいる。


「原田さんもですかっ?」

「ああ、だから間島さんも早く…って戻れ、そっちは敵ばかりだっ!」


隊士の叫びを無視し矢央は騒がしさの下へと向かって再び走り出した。


ーーーお願い!無事でいてっ!!












土方は目の前の男の姿に嘲け笑った。


「本当に生きていやがったとはな?」

「ええ、全て知っていましたのでね? 土方殿は本当に悪知恵が働くようだ」

「最初はそっちだろうが。ええ、伊東さんよお」



近藤宅を出た時、確かに伊東は酔っていた。

あまりに酒が上手く飲み過ぎたことを若干後悔しながら夜道を歩いていると、ゆらりと影が揺れたような気がした。


笑ってしまった。


ーーー熊木殿の予言は本当か。


最初は真かどうか疑ったのだ、斉藤により近藤暗殺が漏れ、それを逆手に取られ十一月十八日に自分が暗殺され御陵衛士は壊滅すると。

熊木の怪しい能力を知り、これを利用せんと企んだが、まさか己の未来を告げられると誰が思おうか。

そしてそれをどう信じろと。


しかし、斉藤は実際に間者だった。


そして、熊木に言われた通り近藤の妾宅に招かれて……。



「土方殿、何故私が此処にいるのか知りたいのでしょう?」


扇子で口許を隠し、ニヤリと眼が笑みを浮かべる。


「ああ、知りてえな」

「全て見えているのですよ、彼は」

「彼? それは熊木か?」

「御名答。 熊木殿は、未来というものが見えているらしいですよ? 今日までのこと全て当たっていたので、今こうして私は貴方とお話しているのです」


くくっと笑う伊東の背後からゾロゾロと怪しい男達が姿を見せた。

どう考えても全員が御陵衛士とは考えにくい。


敵の数は凡そ五十といったとこか?


んな人数どこから連れてきたんだ、と土方は舌打ちした。





「さあ、土方殿。 新選組をいただきに参りましたよ」