握られた手を見つめ、ギュッと拳を握りしめた。


"あったけぇだろ"


「なに…これ……」


どうしよう。

ドキドキする。


意味の分からないときめきを感じながら、永倉達とは逆方向に走って行く矢央の顔は赤く染まっていた。



―――
―――――
――――――……




「あ〜あ、あれは反則だなぁ」


寒空の下、新撰組にだけではなく矢央を取り巻く関係にも僅な変化が起こる。


それにいち早く気づいた男は、自室の反対側の廊下を走り去る矢央を見ながら小さく笑みを作った。



「そういうことですか……」


少し開いていた戸をピシャリと閉じ、同時に重たい瞼も閉じる。


「ああ、参りましたねぇ…」



あっという間に秋が過ぎ、本格的な冬が訪れる。

今年はいつもと違い、心に染みる冬になりそうな予感がした――――……



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