大分酒が進んだ頃、近藤はふと尋ねる。
「…平助は、元気でやっておりますか?」
杯を持った伊東の手が僅かに反応を示したが、視線を下げていた近藤は気付いていない。
コトリと杯を善に置いた。
「ええ元気ですよ。 最初はやはり慣れ親しんだ新選組を離れ落ち着かない様子でしたが、穏やかな刻を過ごすことで、平助も落ち着いたようです」
「そうですか。 平助は…」
「平助にとって、新選組は家族そのものだったのでしょうね」
近藤は顔を上げる。
「尊敬出来る兄達の背を追い、そして共に戦い、時に笑い悲しみ。 ありふれた日常の中で、平助はあそこに居場所を見つけたのでしょう」
近藤、そして息を潜めている土方の表情が強張る。
「彼の貴方方に向ける眼に疑いの色は一切なかったはずなのに、どうしてでしょうね? いつから、彼は貴方方を信じられなくなったのか」
善の上の食事は既になくなっている。
それ程宴の時間は進んでいて、伊東も大分酒を飲んでいるはずなのに、伊東の言葉は軽やかだった。
微笑みは余裕さえ感じる。
「いつから…、山南さんが亡くなってからでしょうかね? 山南さんを、平助はとても慕っていましたから。 彼がいなくなったのは、新選組にとって良きことだったのか…」
「伊東さん、山南さんのことは既に終わったことですので、それ以上は首を突っ込まないで頂きたい」
「あ、それは失敬。 さあさあ、辛気臭いのは止しましょう! せっかくの上手い酒ですからね?」
まだだ。
まだ宴は終わりそうもない。



