駆け抜けた少女ー二幕ー【完】


十一月十八日、この日、近藤の妾宅にて伊東を招き伊東を酔わせ、その帰り伊東を暗殺する。





「私は屯所に残るべきだったんでしょうか?」


一番隊は御陵衛士の討伐の任についていなかったので、沖田と矢央は屯所居残り組である。

御陵衛士が屯所に来ることはないと思うが、一応の警戒はしておけと言うのが土方から言われていた。


「流石に刀を持ったばかりの矢央さんを奇襲組にはつかせられないでしょう? 大丈夫ですよ、永倉さん達なら上手くやってくれます」

「そう、ですよね…」



伊東暗殺、今朝からずっと脳裏を廻る言葉に、何度溜息をついたことか。

やはりどんなに好きではない相手でも、“死”というものは戸惑ってしまうのだ。


それでもそうでもしなければ、またいつ近藤が狙われるかもしれなくて、矢央は歯痒い思いに駆られていた。



「今頃、伊東さんは…」

「矢央さん考えるのはよしなさい。 私達は、彼等の帰りを待っていましょう」

「そうですね」














「いやー、伊東さん久しぶりですな! どうです、そちらは?」

「此方は至って平和ですよ。 近藤殿達の方が何かと大変でしょう? 何かあればいつでも手を貸しますよ」

「それは頼もしい! ささ、どんどん飲んでくだされ!」


隣室で土方は言いようのない不安に駆られていた。

伊東が何人かは手下を連れてくると踏んでいた土方は、近藤に何かあってはならぬと自身も此処へ身を隠していたが、予想に反して伊東は一人でやってきた。


相変わらず何かを企んでいそうな笑みで、先程から近藤と酒を飲み交わしている。

予定通りではないか。

このまま飲んで酔わせて、そして殺してしまえばいい。

なのに何故か落ち着かず、土方の足は苛立ちに揺れている。