「にしてもあれだなあ…。矢央のこんな姿見たら、山南さんたまげるだろうなあ」


饅頭をひょいっと口に放り込み、晴れ渡る秋空を見上げ原田は言った。

確かに、と沖田は頷く。


「矢央さんを、娘のように可愛がってましたからね」

「山南さんの方がお父さんより若いから、せめて妹にしてあげてくださいよ」


娘のようにと言われて嬉しくないわけではないが、それでは山南に失礼なような気がして矢央は訂正した。


「えーでも、此処には父のような人他にも三名程いません?」

「それって」


原田と永倉が口を揃えて言えば、沖田はにっこりと微笑んだ。


「近藤さんや、土方さんや、源さんも、まるで父上のようでしょう?」

「あー、でも、近藤さんと源さんは少し似てるかもしれませんね」


そこに土方は入ってないんだなと、また原田と永倉は頷きあった。


そして、どのあたりが似ているのかと聞かれて矢央は懐かしい父の姿を思い浮かべた。

近藤のようにがっしとはしていないし、井上のようにしっかりともしていなかった父。


「でも、困った時に手を差し出してくれるというか。 表立って何かしてくれるわけじゃないんですけど、でもいてくれるだけで安心できるというか…」


纏まりのない話に照れて頬を掻く矢央。

今此処にいる男と違い、近藤や井上とは余り関わりはないが、それでもやはり二人の存在はこの時代に一人になった頃の矢央は頼れる存在だったのは確かだった。

それは陰でいつも見守ってくれているからだろうと、だから安心して好きなようにしていられるのだと思っている。



「あ、それと土方さんは、お父さんと言うより、おじぃちゃんに似てます!」

「おじぃちゃんっ!?」

「ぷふっ!!」


原田と永倉はあわおわと慌てだし、沖田は腹を抱えて笑っている。