慶応三年、十月、将軍慶喜が朝廷に政権を返上。


矢央の知らないところで時代は着実に進んでいった。

















八月から始まった剣術稽古のおかげで、矢央も多少は剣を扱えるまでに成長していた。

やはり元々運動神経が良いことや、武術で鍛えた瞬発力や感の良さもあるのだろう、その目まぐるしい成長ぶりに土方も驚いたとか。


それでも、やはり男相手の勝負となれば傷は絶えず、毎日新しい傷を作っていた。



「舐めとけば治る、治る!」

「お前、中身まで俺等に似せるなよ」


毎日怪我をしているので、山崎に手当てしてもらうのも悪いと思い今では矢央が自身の手当てをしていたが、面倒くさがりなためその手当ても蔑ろにしていた。

そして、上の台詞を吐けば、すかさず永倉の突っ込みが入る。


「そうですよねー。 池田屋で手を斬ったと言うのに“舐めときゃ治る”って言ってたみたいですし?」


と、沖田が言えば、


「違う違う! あれは、ただ医者が怖かったんだよな? 新八!」


と、茶化す原田。


今日も新選組は普段通りの日常を過ごしていた。

時代の流れが少しずつ自分達に不利に流れて行こうとも、新選組が目指すものは変わらないのだとでも言うように。