「沖田さん、何や聞き捨てならんこと言いはりましたな?」


沖田と永倉の背後からどす黒い気配を纏った山崎が迫ると、びくっと肩を揺らす二人。


「や、山崎さん?」


ぐぎぎぎと、機械音を鳴らし山崎を見上げると眼を細め無表情の綺麗な顔が己を見下ろしていて、


「色男が台無しですよ!」


へらっと笑ってみても全く変化のない山崎。


鬼より怖いんですがっ!?


「まさかと思いますが、沖田さん俺に黙って稽古してはったんですか?」


ずいっと、沖田に迫る。


「…いやあ、調子が良い時に、少し…ですよ?」


ささっと、山崎から距離を取る。


「おーきーたーさーんっ!! あれほど大人しくしといてくださいと言ったでしょうがあああっ!」

「あー!ごめんなさーい!怒らないでくださいよー!」

「怒らんでおられるわけないやろーっ!つうか、走るな!騒ぐな!刀を置けー!!」















「何なんだ、あいつら?」


沖田と山崎が去った後、残された三人は遠くに聞こえる沖田達のやり取りに苦笑いした。


「てか、山崎さん素が出てましたね」

「それだけ総司のこと心配してんだろ? まあ、走らせてんのは本人だけどな」

「ですよねー」



原田と矢央の笑い声を聞きながら、永倉はうっすらと笑みを浮かべもう一度空を見上げた。


その顔は笑みを浮かべているが、どこか切なげで、永倉はゆっくりと瞼を閉ざした。