最近の水仕事は手にくる。

まだ十六歳の若さで、矢央は手の荒れが悩みだった。


「いたたっ……」


皹になった手に 「はあ…」 と、温かい息を吹き掛けていると、急にグイッと肩を引かれた。


なんだ(?)と、背後を振り替えればそこにいたのは永倉。


「うをっ、すっげぇ荒れてるな」

「…え、ああ。 これでも毎日、洗い物してるんで」


この時代に来てから家事を知らなかった矢央も、大分家事を覚えた。


まだ一人で料理は出来ないが、洗い物や洗濯掃除くらいは人並みにこなせるまでに成長している。

永倉は痛々しい手を見て目を細めた。



「貸してみ」

「ん?」


首を傾げると、顎で手を指した。

両手を永倉の前に上げ 「ん?」 と、また首を傾げていると。


「……はあ〜」


矢央の両手首を掴んだ永倉は、少し背を屈めて顔を手に近付けると、そっと息を吹き掛けた。

先程まで矢央自身がしていたことだ。


そのあと、小さな手を己の手で包み込みギュッと握りしめた。

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