「これからも俺らと命のやりとりの場を共にするなら、女の幸せは手に入れられんかもしれん」


これから歩む道程は戦ばかりになるのではないかと予想する山崎は、この戦慣れしていない彼女が果たして生き残れるのかと思っていた。


できる限りは守ってやろうと思うが、彼女が懸念するように矢央一人守ることすら大変になるかもしれない。

そんな荒くれた場が、本当に矢央のために良いことなのか分からない。



「今ならまだ好いた男作って、此処を離れたい言うても局長も副長も許してくれるかもしれん」


その時、矢央はぎゅっと拳を強く握った。

未だ窓の外を見詰める山崎には、今矢央が何を思って自嘲気味に笑うのかは分からない。


「間島も、もうええ齢や。 おってもおかしくないやろ」


そこで漸く矢央を振り返る。


「…なにがですか?」

「好いた男の一人や二人。 なんせ此処は男ばっかやらなあ」


その時、一瞬だけ矢央の瞳が戸惑いに揺れたのを見逃さなかった。

やはりそこは観察方、人を見る才能は誰よりもあるらしい。


「…まさかと思うが、ほんまにおったんか」


少し意外だと眼を見張る。

そんな山崎に罰悪そうに頬をかいた。



「…誰や? …ってそんな野暮なことは聞いたあかんか」