「阿呆が。 お前のことはちゃんと認めとるわ。 女やと分かっていても、今日まで共に戦ってきとんやから」


今日まで共に戦ってきた。
その言葉は凄く嬉しかった。

救護隊として仕事していた矢央にとって、任務中一番関わりがあったのは山崎だ。


「良かった」


だからその山崎に認められているということは、素直に嬉しく顔を綻ばせる。



「せやけどそれとこれは話はちゃう。 救護隊にいれば多少命のやりとりからは一歩引いたところから見られるが、一番隊はそうはいかん。そう思うてたから副長は、今まで何処にも配属せんかったんや」


それでも時代は少しずつ新撰組にとって苛酷な運命へと導いていく。

大切な皆がそれぞれ最終的にどんな運命を辿るのかは知らなくても、新撰組の末路くらいは矢央もわかっている。


「きっと救護隊にいても、どっちみち刀を持つことになっていたと思います」


遠いようで近い未来を見詰める瞳は、僅に悲しみを含んでいる。


「これからきっともっと大変になるんでしょう?」


それこそ皆に守ってもらう余裕すらなくなるだろう。


それぞれの信念のため、男達はきっと女である矢央に手をやくはずだ。


「かもしれんな」

「置いていかれたくないんです。 女だから、弱いから、守ってやれないからって、いつか足手まといになる前に、皆にこいつなら大丈夫って思ってもらいたい、から」


皆の居場所を守りたいと同時に、矢央自身の居場所も失わないために。


「さよか。 ほな間島は女を捨てるきなんか」

「え?」


思いもしなかった言葉に身を固める。