そわそわと落ち着かない。
いつもどうしてなのかと思う。
沖田や藤堂といれば落ち着くし、土方や山崎などといても落ち着かないことはない。
なのに時々永倉といると、どうしてか落ち着かずそわそわとしてしまうのが理解不能だった。
「え、えっと。 総司さんが、自分も矢央さんって呼んでるから、総司さんって呼んでほしいって…」
沖田がそう言った本当の理由なんて矢央には分からない。 でも、それを聞いた永倉には沖田の本心が分かり「ふうん」と素っ気なく返した。
「な、永倉さん?」
傾けたままだった猪口を口に運び一気に飲み干した永倉を見ると、顎を上げたまま視線だけを矢央に向けてにやっと口端を上げた。
「なら俺のことも呼んでみるか?」
「……へ?」
「な、ま、え。 総司の理屈だと、そうなるだろ。 だから俺のことも呼んでみるかって」
なんだその理屈は。それは屁理屈と言うのではないのか。
「い、いえ。 さすがに永倉さんは、年上過ぎるし?」
若く見える永倉も、矢央より十も上である。
だからさすがに失礼なような気がして遠慮してみせれば。
「総司も五歳上か? 十も五も変わらねえ」
「いやいや、全然っ変わりますよ!」
ブンブンと大きく左右に首を振っていると、いきなりガシッと頭を固定され、正面から永倉の切れ長な双眼に見つめられて固まってしまう。
「いいから呼んでみな。 新八って」



