屯所に戻り手当を施された後も矢央が眼を開ける様子はなかった。


自室に運ばれ布団で深く眠りにつく矢央を見つめているのは沖田である。


「総司、寒くねぇのか?」



見張り役の永倉は、いくら厚着しているとは言え冷える部屋で、矢央の目覚めを待つ沖田が気になってしかたない。



「永倉さんこそ、外は寒いでしょ? 二人っきりになるわけじゃないんですし、部屋に入ってはどうです?」

「…んじゃあ、そうさせてもらうわ」


一応女性の部屋なわけで入るのを遠慮していたが、よく考えれば沖田が部屋に入っているならば自分が入っても構わないのかと部屋の戸を開ける。



部屋に入ると、いつも大きな瞳で自分を出迎えてくれるはずの笑顔はそこにない。


ただただ静かに眠り続けている。



「なんでこいつばかりなんだろうな」


ふと、隣に腰掛けた永倉が呟いた。