矢央と原田は、声のした方へ一斉に振り向いた。
廊下をにこにこと笑顔を見せながら此方に向かって歩いてくるのは沖田。
「総司、寝てなくていいのか?」
「いいんです! というか、焼き芋食べるなら私を誘ってくださいよ」
少し肌寒くなってきた十月の正午、薄手の羽織を肩にかけた沖田がプクッと頬を膨らませ抗議した。
それに対し苦笑いで 「わりぃわりぃ」 と謝る原田。
「で、矢央さん。 それはきっと、人肌…というか人が恋しいのではないですか?」
「人が恋しい…ですか?」
原田から焼き芋を受け取った後、縁側に腰を下ろした沖田を見上げながら首を傾げる。
人が恋しいとは、どういう意味だろうかと。
焼き芋を食べ満足そうに微笑みながら沖田は、ふと意地悪をしてやりたい気分がわき起こる。
「ねぇ、原田さん。 最近おまささんとはいかがですか?」
「ブゥッ!? な、なにを突然?」
「うふふ、慌てる必要はありませんよ。 もう誰もが認めるお二人ですからねぇ。
それで、やはりこの季節はより彼女といたいと思うものですか?」
もぐもぐ……ゴクンッ!
顔を赤らめ目線を反らす原田。
沖田と矢央の視線が痛い。
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