「永倉さん」

「よ。ちぃっと付き合え」



そう言って、お盆に乗ったお茶と団子を床に置いて矢央の隣に腰を下ろした永倉をまじまじと見つめる。


珍しいとうっかり言葉にしそうになった。


「んなに見るな。 別に毒なんか仕込んでねぇから」

「いえ別にそんなつもりは…」


気まずくなって俯くと、隣からクスクスと含み笑いが聞こえて肩を上下させた。


「それお華のだよな?」

「あ、はい」


……。
無言が続き更に気まずい。


昔はもっと普通に話せていたはずなのに、と考えて普通にってどんなんだっけ?と首を傾げる。

すると、また隣から笑いが起こり。

ちらりと永倉を見上げると、どうやら彼はずっと此方を見ていた様子でカアと顔が熱くなった。



「百面相」

「な、なんなんですか!? あたしに用があるんじゃないんですか?」


少し苛立って尋ねてみたけど、永倉から返ってきたのは意外な言葉だった。



「用がなくちゃお前の隣にいたら駄目なのか」


至極真面目に笑みのない表情で言われて、ドキッと心臓が跳ねた。ドキドキと煩い。



「永倉さん?」

「まあー、ほら用ならこれだ! 団子食わせてやろかなってよ」

「うわっ!? だ、団子ですか?」


突然伸びてきた手に荒々しく髪を掻き回されて、前髪で視界が歪んだ。


手早く髪を整えて文句を言ってやろうと思ったけど、止めた。


「…なんか久しぶりですね」

「ああ」


こうして永倉と二人でお茶の時間を過ごすのも、荒れてない永倉の横顔を見るのもすごく久しぶりだった。