左から右へと芋を渡らせる姿に、隣では原田がゲラゲラと笑い声をあげていた。
「素手だと熱いから紙に包んで食えよ」
「ううっ…手が真っ赤ッか…」
「ふっ、ほんとおめぇはそそっかしいヤツだよな」
矢央を見ていると飽きがこないと言うが、原田もその一人だった。
自分に妹がいたらこんな感じかと、可愛がりたくなるものだ。
しかし当の矢央は馬鹿にされているように感じたのか、ふてくされながら芋を頬張っている。
口の中に広がる甘味と苦味を味わいながら、秋の訪れを堪能しつつ青空に点々と浮かぶ白い雲を眺めた。
どこを見ても秋の気配、ほんの少し寂しく感じる季節だ。
「秋って、なんだか切なくなりません?」
「ん〜?」
自分の分の焼き芋を取り大口あけ頬張る原田は、少し成長した矢央の横顔を見つめた。
「普通は春が別れや旅立ちの季節で寂しく思うのかもしれないけど、秋はそんなこともないのに何だか切なくなるんですよねぇ」
「……よくはわかんねぇが、あれじゃねぇか? 暑苦しい夏が終わったから物足りねぇっつぅか」
「う〜ん、それもあるかもしれないけど、それとは別にきゅぅ…ってこの辺が」
と、胸の辺りを掴む。
少し冷たくなった風に当てられてなのか、空が近く感じるからか、これから過酷な冬がやって来るからなのか。
「それは、人肌を恋しくおもってではないですか?」
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