折角いれてもらっお茶を冷めないうちに呑むため、名残惜しいが一旦茂を原田に返してから湯呑みに口をつけた。


既に辺りは雪がうっすらと積もり、苦手な冬の訪れに溜め息が出る程に冷えた手を湯呑み包み込み暖める。



「それにしてもよぉ、お前もちぃっとばかり身成を考えていいだろ?」


「ーと、言いますと?」


ズズッと、茶が喉を通り一息ついて原田をチラリと見やる。


若干呆れた視線を向けられて、さすがに何が言いたいのか分かってしまった。


原田は自分が家庭を持ってからというもの、家庭の素晴らしさ家族の素晴らしさについて良く語る。

いやそれはもう、ウザい程にだ。


「お前、来年には十九だろ? まじで行きおくー」

「元々この時代の人間じゃないから、その辺は気にしないでいいと思ってますよ」


原田の言葉を遮り、すっぱり切り捨てる。


「原田さんが、あたしの将来を気にしてくれるのは嬉しいけど。 でも、未来から来たあたしがこの時代の誰かと結婚したりしら、あるはずの未来がおかしくなるじゃないですか」


「それだけどよ、お前あん時未来に帰る選択も出来たのに帰らなかっただろ。
つうことはよ、もうこっちの人間として生けてけばいいんじゃねぇのか?」


あの時とは、お華とのこで確かに最後に未来に帰る選択を迫られはした。


しかし、それとこれとは話が別なのである。


矢央は此方で生きる未来を選んだが、だからと言って此方の人間と深く関わって良いものではないと思う。


「本当ならあたしじゃない誰かと結ばれるはずで、子供が生まれてるはずなのに、それがあたしに代わっちゃったら……やっぱりおかしなことになるじゃないですか」


生まれるはずの人間が生まれず、生まれるはずのない人間が生まれれば少なからず未来は変わる。

矢央はそれがとても怖いものだと思ってしまう。


自分一人のせいで、命がなくなることがーーー