月日はあっという間に過ぎ、時は既に暮れを迎える。
時代は十五第将軍慶喜が就任し、孝明天皇死去など変わりつつあった。
矢央にとっては平和そのもので、あれから熊木や長州が何かを仕掛けて来ることはなかった。
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「矢央よぉ、お前せっかくの非番でしかも暮れだってのに家に来てて良かったのか?」
「なに言ってんですか。 非番で暮れだからこそじゃないですか! ねぇ、茂ちゃーん」
屯所から少し離れた場所に家を構えた原田の家に、まさと茂に会いにやってきた矢央はきゃっきゃっと騒ぐ茂を抱上げている。
「矢央ちゃん、お茶どうぞ」
「あ、おまささんありがとう!」
原田と非番が重なると、度々こうして家に訪れるので、今では良き仲となった矢央とまさ。
原田も非番なわけで、たまに邪魔者扱いされたりするが、それでも少しの時間無理を押してこうして茂と遊ぶのを楽しみにしていた。
きっと気晴らしになるのだろうと、原田も無下に断ることもできないし、愛しいまさや可愛い茂が矢央がやってくると楽しそうにするので、まあいいかと思ったりもする。