「はぐっ!? ほう…もうはん…?」
「半分こね? もう一つは総司にでもあげてよ」
そう言うと、パンパンと、手を叩き立ち上がると、うーんと伸びをしてはあっと大きく息を吐き出した。
「ちょっと散歩行ってくるよ。 日が暮れるまでには帰るから」
"帰る"と言う言葉が何故こんなにも安心できるのだろうか。
普通に交わされていた言葉なのに、先程までの話しのせいで不安になってしまう。
「絶対帰ってきてくださいよ? ご飯作って待ってますよ? 平助さんまで永倉さんみたいに帰ってこないとか駄目ですからね!」
「大丈夫。 此処が僕の帰る場所なんでしょ?」
コクンと頷くと、にこっと笑みが返ってくる。
「……少し散歩に行くだけだから、ちゃんと帰るよ」
「待ってます!」
「ん。じゃあ、お茶と饅頭ご馳走さま」
軽く手を振って廊下を歩いて行く藤堂の背中を、矢央は見えなくなるまで見送った。
そして、矢央もその場から離れて暫くすると物陰から一人の男がニヤリと不適な笑みを浮かべた、その男もその場を静かに去っていった。