頭上からクスクスと笑い声。


矢央の髪をさらっと指で掬い、ぽんっと何度か撫でる。


藤堂にしてはいつになく大胆な行動だ。



「土方さんとか鬼の形相で切腹申し付けられそうだし。 総司には死ぬまで追われそうだし、新八さんには一晩中説教くらいそう」


「へ、平助さん?」


「ああ、でも。 それでも良いやって思えるんだよねぇ」


藤堂は矢央を無視して話を進める。


悪巧みを考えついた悪餓鬼のような、悪戯な笑みを浮かべながら。




「此処を出て、矢央ちゃんと二人で小さな家に住んじゃってさ。 政治とか戦とか関係ないじゃんって、二人だけで楽しく暮らすんだ」



楽しそうに話す藤堂とは真逆に、矢央の心はソワソワしだす。


藤堂が壊れて行くようだった。



「平助さんっ! 何言ってるんですか? 平助さんのいる場所は此処ですよ!?
新撰組が平助さんの帰る場所で、そこにはあたしだけじゃなく皆が平助さんを待ってるんですよ!」


「……みんなが、か」


「そうですよ!! 近藤さんや土方さん、沖田さんや永倉さん原田さん斎藤さん、あ、あとついでに山崎さんもオマケします!!」


「山崎さんはオマケなの? なんか酷い言われようだよね」


空気の流れが変わったと、ホッと安堵する。

藤堂は矢央を解放すると、饅頭を手に取り半分に割ると片割れを矢央の口に放り込んだ。