急に視界いっぱいに入った藤堂。

気付けばグイっと身体を引き寄せられ、藤堂に抱き締められている。


最近はやたら抱き締められているな、と、ふと思いながら大人しく藤堂の腕の中に収まっていると。













「守らせてよ…。 僕にはもう、矢央ちゃんしかいないんだ」



泣いているのかと思う程に弱々しい声が耳元で囁かれる。



「これ以上、強くならないで…僕がいなくてもいい女の子にならないでよっ」



背中に回された手がギュッと矢央の服を掴む。



「平助さん……あたしは、平助さんが必要ですよ。 まるでいなくなるみたいに言わないでください…よ」


確かに其処に温もりがあるはずなのに、藤堂が此処にはいないようで不安になる。


藤堂の存在を確かめるように、お日様の薫りがする藤堂の胸に顔を埋めた。



矢央の細い身体を必死に抱き締めながらも、藤堂が見ていたのは一体なんだったのか。



「このまま矢央ちゃんを拐ったら、絶対怒られるんだろうなぁ」


「え?」


緊張した声でなく、譫言なように呟かれた言葉に顔を上げる。