その日の夜、少し落ち着いた矢央を含め幹部数名が集まった。


「矢央、怖い思いさせちまってすまねぇな」

「次はない安心しろ」


あの場にいなかった原田と斎藤は、いの一番に矢央にそう言った。

素直に嬉しかった矢央は、はいっと微笑んで頷いた。



「皆さん、ご心配おかけしてすみませんでした」


「矢央君は、何も悪くはないじゃないか。 頭を上げてくれ」


チラッと見上げると、逆に申し訳ないと苦笑いする近藤がいた。


「それで、だ。 総司から聞いたが、あの野郎の狙いはお前じゃなくそれだったのか?」

「はい。 助けを呼ぼうとしたら、直ぐに殺されそうな勢いだったし……迷わず赤石をよこせって」


そこで皆の視線は、山崎に手当され痛々しく細い首に巻かれた包帯に集まる。


「そうか。ならば熊木は、確実に矢央のことを知っていて狙っているのは確定だな」


「でもよぉ、その石ってお華がいない今なんの力があんだよ?」


「それは、なんでしょうか?」


「治癒能力とか?」


「可能性はあるが、だったら矢央自身も必要だろ。 なんせあれは、本体に吸収してんだろぉが」



それぞれに思い当たることを話してみるが、これといった目的が思い当たらず、次第に口数は減った。


「やっぱり、熊木を取っ捕まえるしかねぇわな」


それが一番だろ、と永倉が言えば土方は「山崎」と呼び、何処からか現れた山崎が入口付近に屈んで土方の言葉を待っていた。


「と、言うわけだ。 暫くはそちらに専念してくれ」

「御意。 では、失礼」


チラッと山崎と視線が合い首を傾げた矢央だったが、山崎は何も言わずそのまま姿を消す。


その後、山崎は暫く偵察に時間を取られ、救護隊の仕事で矢央は考える暇なく忙しくなるのだが、これも土方なりの配慮だったりするのは矢央は気づく様子もなかった。