鉛のように重く感じる腕を沖田の背中に回す。


襲われたのは矢央なのに、自分のことように震える沖田の身体を抱き締める。


「矢央さんを守ると誓ったのに、本当に自分が情けない」


「沖田さん……」


「こんなこと今の貴女に聞きにくいのですが、その…何かされましたか?」


何か、とは、途中から駆け付けた沖田には既に肌だけた姿の矢央しか見てなかったので、もし熊木に何かされていたのではと気になって仕方なかった。


何を言われるか覚悟しながら待っていたが、矢央は小さく首を左右に振る。


「大丈夫です。 その、彼が狙っていたのはコレだったみたいで」


コレと言って、少し沖田から身を離した矢央は首からぶら下げていた巾着袋を握った。


「それはお華の? そうですが、取り敢えず…良かった」


赤石のことに一瞬目を見開いた沖田だったが、今はそれよりも何もされていなかったことの方が重要で大きく息を吐き出し、矢央の肩に顔を埋めた。


沖田の長い黒髪が、さらっと落ちてくすぐったい。


「また、心配かけちゃいましたね」

「そんなこと貴女が気にやむことはない。 いえ……」



眉を下げて申し訳なさそうに俯く矢央を覗き込んだ沖田は、矢央の頬に手を添えて言う。



「貴女の心配は常にしていますよ。 男はね、好きな女子の心配ばかりしてしまうんです」


ヘラっと力なく笑みを浮かべて首を傾げる沖田。

女子よりも女子らしい、その綺麗な姿にトクンと胸が踊った。


「ですから、強がらないで」


何故か泣きたいわけでもないのに、優しいその声に反応して涙が溢れた。


「私を頼って」


濡れた目元を拭う優しい指。

溢れて止まらない涙。


「我慢しないで、矢央さん」


「…っ…うっうぅぅっ」


それでも声を殺して泣こうとする矢央が可哀想で、沖田はもう一度強く抱き締めた。