矢央が目を覚ましたのは、翌日の正午を回った頃である。

ゆっくりと瞼を開けると、ちくりと首が痛み眉を寄せた。


「……あ」


思い出した。

昨夜、自分が襲われたことを思いだし、さーっと血の気が引いていくようだった。



「矢央さん、お気づきになりましたか?」


ビクッと矢央の肩が揺れ、ずっと寝ずに傍にいた沖田は表情を歪める。


今までとは違う恐怖を味わった矢央、今こうして自分が此処にいても彼女は恐怖しないかと気にやむ。



「沖田さん、あたし……」


声が僅かに震えていた。


「矢央さん、今貴女に触れることを許してもらえるでしょうか?」


「え?」


恐る恐る沖田を見れば、泣きそうな表情で自分を見つめる沖田がいて、その姿に胸がギュッと締め付けられる。


何も言わないのを自分に都合良く捉えた沖田は、矢央にそっと手を差し伸べた。

白い頬に手を添えると声をかけた時のように反応することはなく、少し安堵した沖田は矢央をゆっくり抱き起こすとぎゅっと抱き締めた。


細く小さな身体は、同じく細くなっていく己の身体の中にもすっぽり埋まってしまう程に頼りない。


「怖い思いさせてごめんなさい。 貴女を守ってあげられなくてごめんなさい」