緊迫感の漂う空間。

土方、永倉、藤堂、沖田、皆刀を抜き熊木を囲んでいる。



「はあ…とんだ邪魔が入ってしまった。 副長お久しぶりです」


熊木は溜め息をつくと、何を考えているか分からない発言をする。


新撰組を脱走しておいて、


「なにが久しぶり、だ。 てめぇ、覚悟できてんだろぉな?」


「覚悟…ですか? そんなもの、端から持ち合わせていませんよ?」


「ああ?」


「だって、死ぬ気ないですから」



誰のか分からない刀を握る音がすると同時に、永倉、藤堂、沖田が熊木目掛けて刀を振りかざした。




「たまお会いしましょう? 間島さん」



ーーーーヒュンッ!!


三者が振り下ろした刀は、互いの刀に擦れ音を立てた。


そして、熊木がいたはずの場所には三つに斬れた蝶の亡骸が落ちている。



「…………」


熊木は、一瞬にして消えたのだった。



「忍びがよ、あいつは…」


土方はグッと奥歯を噛み締めて、足下で未だに震えたままの矢央を見た。