たす…け、て……。

襖の向こうには今夜もきっと誰かが見張っているはずで、声を出せば一か八か助かる可能性だってある。

なのに、経験したことのない恐怖になすすべがない。



「あまり時間もないので、これを頂きます」


そう言って矢央の胸元に手を伸ばし、無理矢理巾着を奪い取ろうとしたがーーー


「なっ!?」


巾着が、否、赤石が突如発光し部屋全体を赤く染め上げた。




ーーーーバンッ!!


「矢央ちゃ……、っ、く、熊木ッッ!!」



今夜の見張りは藤堂平助。

うとうとしかけていた藤堂は、突如背後で部屋が灯りを灯したので直ぐさま襖を開けた。


そして、そこに見た光景に声を荒げる。


矢央の上に要注意人物である熊木が跨がり、肌を隠すはずの衣服は役目を果たしていない上に、矢央の胸元に置かれたままの手。


どう見ても襲われている姿に、込み上げる怒りを抑えられず刀を抜いた藤堂は熊木目掛け刀を突いた。


が、熊木は素早くそれを交わす。