支度が調いお膳を運ぶ。

なんだがいつもより息が上がって、広間につくとうっすら汗も浮かんでいた。


「うーん」

やっぱり薄くないかな?

お雪には合格点をもらった味噌汁だったが、矢央は納得いかない。

どう考えても薄いじゃないか。


「さっきから、どうしたんだ?」

眉間に皺を寄せ、どうにも不味そうに味噌汁をすする矢央に原田は尋ねる。


「味噌汁、薄くないですか?」

「いや、うめぇぞ」

あっさり答えられてしまう。

しかも嘘のない原田に言われると、ちょっと嬉しいものだ。


「なにこれ、お前が作ったのか?」


原田の隣で、味噌汁をすする永倉は「うまいな」と、呟くが、矢央には聞こえていないのか、今だに難しい表情のまま。


「お雪ちゃんに、教わったんです。
ついでに、その魚も焼きました」

「…焦げている」

「斉藤さん、お残しはダメですよ」

「……」


焦げた魚の尻尾を箸でつまみ上げ、珍しか表情を歪める斉藤は、相当食べたくないのだろう。

原田や藤堂に至っては全く気にする様子もないが。

「ごちそうさまでした」

「なんだほとんど食べてねぇじゃねぇか?」


原田は心配しているつもりらしいが、既に箸が矢央の膳に伸びているのは、どう受け取ればいいのだろうか?