「ねぇ、沖田さん……」

「はい。 なんですか?」


山崎を訪ねて来たものの仕事に忙しい山崎は、沖田の部屋に矢央を置いて仕事に向かった。

残された矢央は沖田の体を気遣いながらも、暫く止まることを決め、空気の入れ換えのために開けられた障子の奥に見える庭を眺める。



「体…大丈夫ですか?」


もう何度目になるか分からないほどこの言葉を発している。

沖田を見ると山崎や土方が気にするほど体調が悪いようには見えないのにと思いながらも、沖田は池田屋事件以来表舞台には立たなくなった。


だからどうしても気になる。


「…まったく、土方さんには困ったものだ」


熱い茶を喉に流し込み、ふうと一度息を吐く。

湯飲みを持つ手は、傍にいる少女よりも幾分か白い。


「熱もひいたし、咳もあまり出なくなったんです。 だから仕事だって稽古だって出来るんですよ……」


それは事実で、体調は少し良くなってはいた。

しかしそれは調子が良い時のみだということを沖田は分かっているし、土方や山崎にもバレてしまっている。


「少しは体を動かさないと良くなるものもなりゃしない。 それに、皆さんに心配させるのも心苦しいですよ」


にこっと躊躇いがちに微笑んだ沖田。

眉を寄せ見つめる矢央は胸が締め付けられた。

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