「でも、なんか違う。
今までなかった気持ちに、正直驚いていて……」


最後まで言わず、途中でハッと我に返った。

相談するつもりなどなかったのに、いつの間にか口から出たのは最近の悩みについてだ。


急に気まずくなり、肩を縮こまらせ明後日の方角を見つめた。


「大人―…なれているか、と聞かれると答えに悩む。
が、女になったかと聞かれたら……そうだな」


長く白い指が、矢央のほんのり桃色に染まる頬に触れ、

ビクッと、体を揺らした矢央と斎藤の視線が絡み合う。


「初めて会った時は派手な子供だとしか思わなかったが、美しく成長したな」

「……えっと」


星の明かりに照らされた斎藤の姿こそ美しく、見惚れて目が離せない。


「間島が女らしくなってきたのは、先程言っていた気持ちのせいだろうな」


斎藤には、全て見透かされてしまいそうだ。

勘が鋭く周りをよく見て、観察力に優れる斎藤には……。


「どんな想いにせよ、己を信じることが一番だ」

「自分を?」

「一度心に宿ってしまうと、何をしようが逃れることは、まず不可能。
ならば、己の信じたものを素直に感じ動くしかないと思う」


.