摩訶不思議な出来事を目の当たりにしてきた彼等は、お華や矢央以外にも、そのような能力を持った人間がいても可笑しくないとは思っていた。


「不思議な力を使う、と坂本も言ってはいたが、それがどんなものかはわかんねぇ」

「なんにせよ、そいつを捕まえてみねぇことには分からねぇよ」


此処で話し合いを続けていても、情報が少なすぎて埒があかない。

永倉の言葉を皮切りに、一度解散することになったが、皆がいなくなった広間には沖田の姿がまだあった。



「どうした? まだ気になることがあるのか」

「土方さん、私はまだ戦えますからね。 関与するな…なんて言わないで下さいよ」

「んだよ…それが言いたかったのか」


頭をガシガシとかきながら壁にもたれた土方は、長い睫毛を上げようとしない沖田をチラリと見下ろした。


「…決めたんです。 矢央さんの笑顔は私が守ると」

「無理すれば、近藤さんが泣くぞ?」

「大丈夫ですよ。 そのために、あなたがいるんでしょう?」


何処か寂しげに互いに笑い合う二人。

夏の夜風が、二人の長い髪を揺らしていた―――――。


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