土方は、くるりと身体を回転させると背後にいる矢央達を振り返った。


「とりあえず感謝はしておこう。 だが、それ事態嘘の可能性だってある」


鋭い瞳は、赤く染まり始めた空を見上げる。


「そう思うか思わんかはおんし等の勝手。 しかし、わしが命をかけてこの情報を持って来たのは…矢央のためぜよ」

「坂本さん…」


坂本の黒い瞳は一瞬、悲しみに揺れた。

"命をかけて"とは大袈裟に聞こえるかもしれないが、坂本龍馬にとっては大袈裟ではない。

いつ何処で襲われても可笑しくない彼が、真っ昼間に、しかも敵の新撰組と共にいる矢央を訪ねるのは非常に危険であった。

それでもやって来たのは、それは矢央が坂本の友達であるから。



「おまんには、生きていてほしいからな」


守ることが出来なかった友がいた。

彼もまた、彼女を守りたいと思っていた。


坂本はニコッと微笑むと、大きな手を矢央の頭に乗せた。


「新撰組が嫌になったら、いつでも帰ってくるぜよ!」

「え!?うわっ…」


急に腕を引かれ、何かと思えば土方だった。


「こいつの帰る場所は、いつだって新撰組だ」


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