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京の外れにある旅籠の一室、一つの蝋の灯りの中で男二人が息を潜める。


「そろそろ怪しまれはじめたようです。 周りが警戒をしている」

「ここいらが潮時と言うわけか。 それで、例の件は上手く運びそうなのか?」

「どうでしょうねぇ。 私情を挟んでしまい、嫌われたかもしれないので」

「おいっ、それでは話が違うじゃないか?」


立場的に上になるのか、綺麗な顔立ちの優男は慌てたように焦りの声を漏らした。

が、もう一人の男は至って冷静を保ち、逆にうっすらと笑みさえ浮かべている。


「焦る必要はないですよ。 今まで私が過ちを起こしたことはないでしょう? だから、あなたは今も生きていられるのではないですか」

「そ、それは、そうだが…」


酒は飲まない主義の男は、出されたお茶を一口飲む。

その前で重い息を吐いた優男をチラッと見てから、ゆっくりと瞼を閉じた。



「慎重にいかねばね。 焦って得をすることはなにもない」


新撰組の知らぬとこで、また闇が手を伸ばしゆっくりと近づいていた。


ゆっくり、ゆっくりと――――


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