坂本龍馬と土方歳三、敵対するはずの両者は矢央を間に挟み小山を登り、頂上にあるそんなに広くはない原っぱへとやって来た。


「此処へは京へ初めて来た頃、よく来ていた場所でのぉ。 ん〜! 夏の香りがするぜよ!」


両手を広げ龍馬は、夏の空気を肺いっぱいに吸い込む。

なんとも隙だらけなその背中を見て、土方は眉を寄せた。



(こんな野郎を必死こいて捕まえようとしてんのか…)



「ところで坂本さん、お元気でしたか!?」


今か今かとタイミングを待っていた。

お尋ね者である龍馬に、町中で話しかけることも出来ず、此処へ来るまで少し距離を置き後をつけた。

土方に遠慮する気持ちは既になく、久しぶり会った友人との再会に二人ともにんまりと笑みを浮かべる。



「ピンピンしとうぜよ! 矢央もその様子じゃあ毎日をエンジョイしとるなっ!?」

「エンジョイって、また新しい言葉覚えてきたんですね!? あはは、私はいつでも元気ですよ!」

「…お転婆ですぎて困るがな」

「いやいや! 土方殿ぉ〜、それが矢央の良いところぜよ」

「…んなことより、話があるんじゃねぇのか? その内容によっちゃあ、俺はてめぇをとっ捕まえる必要があるんだがな」


一応は話を聞く気がある土方だったが、その手はやはり腰の刀にあった。


冗談ではない雰囲気を醸し出す土方に、矢央はおろおろとし不安気な表情で龍馬を見つめる。

すると龍馬は、矢央の頭を優しく撫でこう言った。





「矢央を守るために、おんしにある情報を持ってきた」



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