死を救えなかった"大切な人"が、矢央の脳裏に三人浮かんだ。

芹沢も山南も以蔵も、このような時代でなければ生きていられたはずだ。

仲間が仲間を、死に追い詰めた。


「悪いとは言わねぇさ。 肩書きだけで付き合ってるわけじゃねぇんだからよ」

「でも、皆が仲良くは出来ない」

「ああ、そうだ。 お前が新撰組の敵の中に友だと言える奴がいようが構わねぇさ、けれど敵である以上、いつかは戦う時がやって来る」


矢央に語りかけながらも、土方は違う方向へと身体を向け、ゆらゆらと風に揺れる柳の葉に鋭い目を向けていた。




「だが、俺もむやみやたらに血を流してぇわけでもねぇのさ。 それはあんたも同じじゃねぇのか?」

「……さすがは、新撰組鬼の副長様ぜよ。 おんしなら、少しは話ができそうじゃき」

「坂本さんっ!?」

「しーっぜよ! 隠れとる意味がないきっ!」


矢央が指を指し声を上げると、龍馬は首を左右に振り慌てて人差し指を口元へと運んだ。

そして、不味いと此方も慌てる矢央に走り寄ると、龍馬は隣に立つ土方を見上げニヤリと笑った。


「着いてくるぜよ!」


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