"いずれまた会う日が来る"、そう言って別れた男がいた。

坂本龍馬が、着けていたのだろうか?

矢央にとって、もし己と連絡を取りたがる人物がいるとすれば彼しかいないと思えた。



「お前は、新撰組にいることを後悔したことはねぇのか?」


何気無い質問に過ぎなかったのだが、矢央はキッと土方を睨み上げていた。

そして土方はというと、その睨みに怯むことはなく、しかしどこか寂しげな表情を浮かべている。



「土方さん?」

「たまにな、思うことがある。 この時代にいるはずのなかったお前は、どの位置にも属すはずない存在だ」


立ち止まった土方は、川を挟み反対側の店並みを眺めた。

じめっとした空気にも関わらず、涼しげなその横顔に思わず見惚れてしまう。


「そんなお前にとっちゃあよぉ、幕府側だろうが攘夷側だろうが、良い奴だと思えば、そいつは友になるんじゃねぇのか?」

「…それは…そうですね。 正直、私にはこの時代の人の考え方は難しくて理解できないです」


誰もが外国の圧倒的な力を恐れているが、未来で生きて来た矢央にとっては怖いものではない。

日本人同士が悲しい争いをし、親類でも明日は敵となるかもしれない時代。


「ただ好きだから、仲良くしたいと思うのは悪いことですか?」

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